泉涌寺・善能寺  重森三玲氏の庭
京都市東山区泉涌寺山内町27  電話:075-561-1551
  重森の庭としては非常に珍しい池泉式庭園である。重森は庭園を200庭近く作った。その中にあって池泉式庭園は10庭くらいである。その場合は既存の庭に池があったため施主が池庭を望んだ場合が多い。新規の庭を作った場合で池庭にしたのは当庭園と漢陽寺くらいであろうか。重森が古典式庭園のように池を穿ち護岸に石組みをした庭園は当善能寺のみである。
  古典式の池庭は護岸工事をするには石によって行われる場合が多い。護岸の石組みは土木的な意味合いから次第に立体造形を得るような石組みになった。
  しかし、重森は池を穿たずに枯山水で立体造形を意匠したために色々な手法を駆使した。それが重森の枯山水庭園といえる。この庭は古典様式で造園している。いや古典の庭より徹底して護岸を連続的な立体造形で埋め尽くした。あたかも今までの鬱憤を一気に晴らすかのようだ。
  山畔には龍門瀑がそそり立っている。厳しい稜線の鯉魚が高い滝に挑戦する姿である。この滝は左右の滝添え石が水落石より前に組まれていて、奥行きのある滝になっている。いわば立体的な滝である。彼の龍門瀑の到達点であると思われる。
  重森の枯山水庭園について考察するのに必須の庭である。

▲護岸の石は全て青石で組まれている。特に正面の石は亀石でもあるし鶴石でもある。鶴亀の極楽浄土の庭を望まれたのであろうか。飛行機にも似ている具象的な石を敢えて採用したのも珍しいことである。それはこの庭を寄進された方が飛行機事故で遭難された方のご遺族だからであろうか。

▲出島は全て林立した石で埋め尽くされている。

▲雨が上がると本堂前の広場は水蒸気による靄が竜巻のように渦巻いた

▲木立の下には美しい苔が

▲鶴であり亀であり、飛行機でもある。

▲連続的な立体造形に息を呑む

▲龍門瀑の全景(ポンプにより給水されていたが現在は稼動していなく、涸池である)

▲迫力のある石組み

▲出島を結ぶ橋の周りは林立する石柱群だ

▲本堂前の造形と三尊石組みは重森の枯山水庭園(周りには白川砂が敷かれていた)

▲重森のデザインの延段
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