桑村家 重森三玲の昭和37年の作
兵庫県多可郡多可町  非公開
庭園
 当家には母屋の前に庭園があったが、先代の当主が書院を作る際に重森に造園を依頼した。母屋と書院の間にある空間は以前からの石や多宝塔、蹲を採用している。施主の愛着のある石や石造美術は利用しているが、庭園中央部は紀州の緑泥片岩(青石)をふんだんに採用している。更に重森が頭を悩ましたのは書院前の門であろう。書院から見て門へは飛び石が打たれているが、庭園を左右に分断する印象を与える。
  一方母屋から庭園を眺めると、手前に以前よりの石を利用した前庭があり、右側には石造多重塔を取り囲むように石が組まれている。更に、正門の奥には巨大な蓬莱連山が連なり、正面には印象的な三尊石が見えなかなか壮観である。書院の前には神仙思想に基づく小さな島があり、その間を白川砂による流水が流れている。流れの途中には舟石や水分け石、岩島が施されている。
  庭園は従来の日本庭園的要素を含むが連続的な立体造形で重森ならでの景観である。一方、書院前の葺き石、蹲の造形は完全に重森の世界である。葺石の間の溝は深くて幅も大きく、更に目地は弁柄で彩られ画家を目指した重森の世界である。

▲母屋脇より庭園への門をくぐる

▲蓬莱連山と三尊石

▲書院前の豪華な石組み

▲蓬莱山中央の三尊石組みと供物台

▲最も印象的な三尊石組み

▲書院から望む全景。左側の門は来客用、右側の門は通用門

▲中央三尊前の舟石

▲書院前の岩島
 
▲鞍馬石の葺石と靴脱石                 ▲書院にある蹲
 
▲母屋から望む庭園全景                 ▲門から望む書院と庭
 
▲母屋から望む石造十三重塔周辺の石組み          ▲以前からあった庭園部分(母屋前)
 
▲門を入ると重森の特徴の立石がある。         ▲母屋と書院を繋ぐ廊下にある蹲

▲塀の背後は土蔵が見える
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