世界遺産の街
 この街には世界遺産としてロマネスク様式の教会、初期ゴシック様式の大聖堂がある。更に中世城塞都市の城壁が殆ど完全な形で残っている。今回の旅は城や、城壁を訪ねることではないが、これらはレコンキスタ(国土回復戦争)と宗教に密接に関係するのであえてここに取り上げた。なお、アビラは標高1131mにありスペインの県都としては最も高いところにある。そのため冬は苛酷な寒さであるが、夏は避暑地となる。マドリッドから1時間足らずなので訪ねてみたい街だ。
ロマネスク様式の教会 サン・ビセンテ・バシリカ教会  
 街は中世の城壁で囲まれていて、教会は城壁の外にある。ここは古代キリスト教の殉教者、聖ビセンテとその姉妹クリステラとサビーナが殉教した場所だ。先ず外回廊が目につく、大きな回廊がホールのようだ。そこを通りぬけて、西正面に行く。このファサードは後期ロマネスク様式の彫刻がある。中央の柱にはキリスト像、ティンパヌムにはラザロの物語、柱には福音書記者が何かを語り合っている。

 なおこの街にはサン・ペトロ聖堂(ゴシック期に入っている)や聖女テレーサのゆかりの修道院などがある。蛇足ながら記すと聖女の名のついたイエマス・デ・サンタ・テレーサと言う卵の黄身入りの砂糖菓子が有名だ。

▲福音書記者             ▲西正面入口    ▲外回廊
初期ゴシック様式の教会 要塞の機能を持つ大聖堂
 再入植時代の初期に建設された大聖堂は城壁に連結している。大聖堂の後陣は城壁の塔の一つをなしている。ファサードの片脇を固める頑丈な一基の塔が要塞らしさを強調し、建造された時代らしさを映し出す。ロマネスク様式からゴシック様式への過渡期の建築であるこの大聖堂は、12世紀初頭に純粋なロマネスク様式で建設が始められた。しかし、1157年になると、ピレネー山脈のかなたの新しい芸術傾向に通暁したブルゴーニュ出身の名工フルチェルが作業を担当することになり、ゴシックの範疇に入るとみなされる要素が取り入れられた。なお片方の塔はついぞ建設されることが無かった

▲大聖堂正面         ▲内部構造         ▲艶めかしい彫刻 



完全な形の城塞都市

難攻不落の砦
 キリスト教勢力とイスラム教勢力の最前線が、教会を接したこのアビラには、カステーリャ人が徐々に再入植を始めた時代に建設されたヨーロッパ最大の要塞都市であった。いわば、十字架の旗印の下に、イベリア半島全域を、キリスト教徒の手に奪還しようとしたレコンキスタの確固たる象徴がアビラであった。規模は900m×450m、平均高さ12m、88の堡塔、9つの城門である。完成は1091年。なお、この城壁はローマの属領時代の名残の塀の上に作られた。この丘の上からは転々と小さな街が望めパノラマが楽しめる。

城壁を眺めながらコーヒーを飲んでいたら、ドイツ人らしき親子三人づれが来た。二十歳を過ぎたお嬢さんは両親となごやかに談笑して、ゆっくり流れる時間を愉しんでいた。暫くして立ち上がったのを見たら、育ちの良い知性的な顔立ち、且つ完全なプロポーションだ。
 
 なお大聖堂の横にはパラドールがあるので、マドリッドのホテルよりこちらをお薦めしたい。

▲アビラ城壁

▲城壁外の街を望む、教会の塔にはコーノトリの巣  ▲パラドールのレストランの看板

街名 複合的な世界遺産の街:アビラ
特徴 @ロマネスク様式教会 A初期ゴシック様式教会 B難攻不落の砦