訪問した街と聖堂 中世の珠玉の宝石:聖地コン
特徴 最も困難な巡礼路に残されたロマネスクの桃源郷
 この街の繁栄は9世紀のあの「聖なる盗み」からである。即ちコンクの修道士アリニドゥスは身分を隠して120Km西の町アジャンにある聖女フォアの聖遺物を盗みコンクに移す、という計画を立てた。そして彼はアジャンに行き何食わぬ顔で10年間下働きをして、ようやく鍵を任されるようになってから「密かな移送」が決行された。尚、聖フォアは3世紀の終わり12歳で殉教した貴族の娘。彼女の奇跡の物語はいくつもあるが足かせをつけた罪人が彼女に悔い改めの祈りをささげると、ただちに足かせが解けた。この逸話にちなんで大聖堂正面にイエスの右手を拝んでいるのが聖フォア。その後ろに足かせが解けている彫刻がある(向かって左隅の三角形の中)

▲ロマネスク彫刻で最も完成したもの。最後の審判を中央に向かって左側は救われたものの世界、右は堕 罪された者の地獄

▲ヨハネ黙示録の最後の審判。雲から湧き出てきたイエスは威厳はあるが高圧的ではない。イエスの頭上には二人の天使が受難の象徴の槍と釘を手に十字架を支えている。
銘文について 「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社新書 55P
最上段左より中央まで(天国)
SANCTORUM CETUS STAT CHRSTO JUDICE LETUS
喜びに満たされた全聖者は、審判者キリストの前に立っている

最上段中央から右端まで(地獄)
HOMINES PERVERSI SIC SUNT IN TARTARA MERSI
邪悪な人々は、このように地獄に落ちてしまうであろう

天使の巻物とキリストの足元にある二段目水平帯(天国)
FIDES,SPES,CARITAS.CONSTANTIA.SIC DATUR ELECTIS AD CELI GAUDIA VINCTIS GLORIA PAX REQUIES PERPETUUSQUE DIES
信仰、希望、慈悲、粘り強さ、謙遜は天井の喜び、栄光、平和、休息、永遠の光のために結びついた選ばれし人々に与えられる

二段目のキリストの足元から右に向かって(地獄)
PENIS INJUSTI CRUCIANTUR IN IGNIBUB USTI DENONAS ATQUE TREMUNT PERPETUOQUE GEMUNT    
悪人たちは悪魔たちの中で、炎によって焼かれる懲罰によって苦しめられる。彼らは永遠に身震いし、うめいている

向かって右の三角形の帯状には(地獄)
FURES,MENDACES,FALSI,CUPIDIQUE,RAPACES SIC SUNT DAMANATI CUNCTI SIMUL ET SCELERATI
泥棒、うそつき、ペテン師、守銭奴、誘惑者は全て極悪人とともに、地獄に落ちる

最下段の左端からの水平帯で罪人たちが改悛するよう勧めている
O PECCATORES TRANSMUTETIS NISI MORES JUDICIUM DURUM VOBIS SCITOTE FUTURUM
罪人たちよ、もしあなた方が心を改めないならば、あなた方は恐ろしい審判を受けるであろうことを知れ
 
▲聖フォアへイエスより手が差し伸べられている▲中段:傲慢、売春、贋金、放蕩、異教、権威の乱用

下段の悪魔たち:左から傲慢、色欲、怠惰(亀によって象徴されその上にサタンが載っている)、貪欲、中傷、怒り、羨望、野蛮

地獄図による教訓
コンクのロマネスク様式の彫刻は天国と地獄の区別を明確に語っている。上記のように14種類の罪が示されている。遠路はるばるやってきて門をくぐろうとしたところで自分による最後の審判を受けることになる。胸に手を当ててみれば貪欲、中傷、怒り、羨望など心当たりがない人がいるだろうか。まさに「あなたたちの中で罪を犯したことの無いものが、先ず、この女に石を投げなさい」ヨハネ8−7

▲この広場を一体どの位の巡礼者が通り過ぎたのだろうか

▲規模のわりには身廊、特に側廊が高く上昇性が強く感じる

▲聖堂入り口にあるホテル・サンジャック安くて、うまい!
 
▲サント・フォアは黄金と宝石  ▲回廊のキャピタルはシンプル
 
▲渓流に向かって              ▲村はずれの小径より

▲聖地コンクは渓流と森に囲まれていた(駐車場より車で5分ほど山に登る)

小さな聖堂が村はずれにある。コンク大聖堂と村が見晴らせる。


▲霧のかかった村を歩いていると早朝の散歩は気持ちがよい
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