アルケ・スナンの製塩工場  ブザンソンから汽車で約30分のアルケ・スナン
時代背景〈磯崎新+篠山紀信 建築行脚 六耀社より
  新古典主義の時代といわれる18世紀中期から19世紀中期の時代に花開いた様式である.従来はバロック様式といわれ視覚的に複雑で軽快な様式である.これに対して新古典主義は、厳格な構成と「崇高なるもの」を求める美意識に基づいていた為に、旧体制から共和制への転換期であったヨーロッパ諸国の、以心を示すのに輪最も適切な様式であった。
  フランスにおける新古典主義の作家はルドー、ルクー、ブレーといわれているが、彼らはバロックの異和性に対して自立性、純粋幾何学性を備えかつ幻想的な様式を好んだ。
  当製塩所を設計したルドーは、比較的作品を作る機会に恵まれ、製塩所の設計は1779年に43歳で完成した。しかし1789年のフランス革命以後は、王室との関係を問われて、一切の仕事から手を引いた。

建築内容
  中心に監督官の館をおき、両側に工場棟、前面に太陽の運行にしたがって半円形の中庭をはさんで、5つの労働者の家や付属倉庫、正面棟が並ぶ。此処には純粋幾何学と宇宙の運行法則とを一致させる自然観は、明らかに「理性」の時代の思想的産物である。

製塩工場
  元の位置は此処から約16km離れたサランにあった。ここは塩水を含んだ湧水地であり工場があった。しかし塩水の水分を蒸発する為には燃料がいるが、当時は材木が使われていたが、何年化すると付近の材木は枯渇してしまった。よって、材木の豊富なアルケ・スナンンに新たな工場を建て、塩水を木管により16km輸送された。工場は19世紀末に稼動を中止し、その後倉庫などに転用されたが、20世紀になって監督官の館が落雷を受けた事もあり、ダイナマイトでの破壊がされた。しかし1926年にフランス政府歴史的建造物に指定され、修復された。現在は未来研究センターのセミナーハウスとなっている。

▲堂々とした正門。新古典主義の理想はギリシャ神殿から始まる

▲列柱の後ろに洞窟状の入口がある

▲ギリシャ神殿のエンタシスの復活

▲監督官の館  マロニエの大木越しに本館が見える。現在は3本しかないがかつては並木道があったであろう

▲塩焼きの為の建物

▲監督官の館の列柱  角柱と円柱を交互に積んだ異様な姿

▲一度目にしたら決して忘れられない

▲端正な仕様

▲どろりと凝縮された塩水を示す。このモチーフは総ての壁に繰り返し表現されている